エフゲニー・プラトフ BOSS (1)

露フィギュアスケート連盟公式季刊誌より、プラトフコーチのインタビューを少しずつ訳していきたと思います。取材は欧州選手権直後ですが、雑誌が出たのは6月末だと思います。
20周年記念にグリシュク/プラトフで何か滑ってほしいな。



ボリス・ホドロフスキー


エフゲニー・プラトフ
BOSS


 それは、ついこの間のことのように思われる。深夜、『ゴリゾント』のテレビ(※)、リレハンメル五輪の中継。挑発的なロックンロール、そして、誰も予想だにしなかった五輪での優勝に呆然とする2つの顔 ― オクサナ・グリシュクとエフゲニー・プラトフだ。

 97年の欧州選手権。この目で見たタンゴとアラビアンダンスのことは決して忘れないだろう。自身2度目の五輪を目前に、ナタリヤ・リニチュク/ゲンナジー・カルポノソフから離れタチヤナ・タラソワコーチのもとへ移った彼らは、すでに経験豊かな無敵のチャンピオンだった。

 ここ最近の大きな国際大会で、私はエフゲニー・アレクサンドロヴィチ・プラトフコーチと話す機会を逃すまいと努めてきた。といっても、彼をロシア式に父称で呼ぶ人などいないのだが。フィギュアスケート史上唯一、アイスダンス競技で2度の五輪を制したそのチャンピオンは、ずい分前にアメリカに住みついたのだ。そこに彼の家と、家族と、仕事がある。

 ザグレブでは、プラトフから欧州選手権の総括だけでなく、現在のアイスダンスの傾向や、コーチ業の秘密について話を聞くことができた。彼は自分をボスと感じるのが好きだと認めたが、プラトフコーチの黄金期はまだこれからだ。



いまの世代のアイスダンサーたちには頭が下がる

 ― あなたとオクサナ・グリシュクが長野オリンピックで優勝してから、今年で15年になります。

 時間ってあっという間に過ぎて行くね!僕たちが2つ目のオリンピック金メダルを獲ったのは、まるで昨日のことみたいなのに。もう1年したら、リレハンメルの優勝から20周年だ。この機会にオクサナと会う必要があるだろうね。

 ― ご自分がオリンピックで優勝したときの演技を、いまコーチとして積み上げてきた経験を通してどのように評価しますか?

 両面ある感じだね。いまの世代のアイスダンサーたちには頭が下がるよ。彼らは氷の上ですごいことをやってる。僕とオクサナも同じことをやれたけど、習得して自分のものにするためには遥かに多くの力と時間を要しただろうね。昔も難しいリフトはあったけど、エレメンツとしてダメになっていてもジャッジに認められることがあったし、ましてや少しのミスぐらいは平気だった。それが今では、レベル4のところでレベル1のものをやってしまうと、ちょっとしたことでも一瞬にして5点失って、はるか下へと飛ばされてしまうんだ。ザグレブの金メダリストと銀メダリストとの得点差は、たったの0.11点だった。

 いまの世代は別の採点システム ― アイスダンスが本物のスポーツになったシステム ― で育ち、まったく別のやり方で練習している。彼らはみんなエレメンツがダメになることを恐がるから、コーチとしては、この恐怖を乗り越えることを生徒に教えるのが重要なんだ。

 その反面、「6.0」の時代は、トップテンの下の10組のダンスが見ていてもっと楽しかったね。いまのアイスダンスで難度と美しさのバランスがとれているのは、トップ選手だけだ。それにコーチの仕事もずっと難しくなったよ。

 ― 「6.0」の時代は、アイスダンスの本物の技術に到達できるのは30歳ぐらいだという考え方がありました。しかし、いまのシステムで求められる負荷を背負うと、その年齢まで氷上で「生きながらえる」ことすら難しく…

 実際、レベル4のスピンをするには「低い足」でしゃがむ必要があって、怪我が多くなる。それに、いまのリフトで背中がやられてしまう選手もたくさんいる。僕の生徒でイギリス人のペニー・クームス/ニコラス・バックランド組は、今シーズン丸1ヵ月、トレーニングと試合のプロセスから離脱してしまったんだ。2カ月間まるで滑ることができなかった。まったく準備できていない状態でグランプリシリーズに出たんだけど、それは行かなくちゃいけないから行っただけ。恐ろしいルールさ!

 その代わり、これはスポーツだから、プログラムづくりへの正しいアプローチの見つけ方さえ学べばいいんだ。そうすれば、選手が大人になるのを待つ必要はない。今の20歳の子たちは、氷上でどんなイメージでも具現化できるんだよ。子どもたちの早熟傾向はフィギュアスケートだけじゃなく、他のスポーツにも見られるからね。幼稚園にパソコンを抱えて、iPodを持って通う世代は、思考のレベルがまったく違う。こういう子たちは僕たちよりも成長が早いんだ。僕とオクサナが滑っていた頃は、選手の子ども時代は25歳ぐらいまで続いていたと思う。これは今の世代には当てはまらないよね。


(※)当時普及していた、ゴリゾント社のブラウン管テレビのこと?


 (つづく)




<原文(PDFファイル)>
http://www.fsonline.ru/fk7.pdf



<自習メモ>
под мышкой: (to carry, hold, put, tuck sth.) under the inner part of the upper arm: under one's arm

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この記事へのコメント

  • こはる

    こんにちは。大変興味深い記事ですね。

    >トップテンの下の10組のダンスが見ていてもっと楽しかったね。

    またそういう時代が来ることを期待します。が、無理かなあ。
    記事の続き、楽しみにしています。
    2013年08月03日 10:52
  • eco

    こはるさん
    コメントありがとうございます。
    いま幼稚園でiPadを使ってる子たちが二十歳になったら、またそんな時代が来るかも…?
    6回シリーズになる予定ですので、気長におつき合いくださいませ^^
    2013年08月03日 23:49
  • もなもな

    プラトフさんの現役時代が好きでした。

    プラトフさんのコメントは、理論的で
    するどいもの多いですね。タラソワや
    モロゾフと違ったタイプだな。

    気長に続きを待っています。
    2013年08月04日 21:21
  • eco

    もなもなさん
    私はアイスダンスを見始めるのが遅かったので、プラトフさんの現役時代といえば、長野五輪が最初で最後という感じ。今思えばもったいないことをしてしまいました。
    この後、具体的な選手についてのコメント等も出てきますので、どうか気長にお待ち下さいませ。
    2013年08月05日 12:35

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