クリロワ<優柔不断なコーチは生き残れない>

2002年頃だったか、フィリップ・キャンデロロ・ファンタジー・オン・アイスを観に行ったとき、クリロワさんがアヴェマリアのプログラムを滑ってくれて、あの神々しい美しさは忘れられません!
ネーベルホルン杯でのインタビューが出ていたので訳してみました。超ロングなので一部抜粋&ざっくりですが。



2014年10月2日
アンドレイ・シモネンコ

アンジェリカ・クリロワ
優柔不断なコーチは
フィギュアスケート界で生き残れない


 (前文略)


 ― アンジェリカ、あなたの生徒ケイトリン・ウィ―バ―/アンドリュー・ポジェ組のウィーバー選手がここオーベルストドルフで、シーズンとシーズンの間の時期は簡単じゃなかったと話していました。どういう意味でしょうか?

 昨シーズンはとても長くて、張りつめていて、シーズンが終わるとあの子たちはショーに出演していたので、準備期間が2カ月間飛んでいってしまったんです。去年の夏にはないことでした。私たちは遅れて準備に入りましたし、それに加えて、今度はカナダの1番手というステータスが二人にプレッシャーをかけています。でも、これは当然のことでもあります。二人はこの道を通らなくてはなりません。私が思うに、二人は今の時点で良いコンディションにあります。グランプリシリーズまであと1カ月、重要なのは怪我のないようにすること。例えば、ボブロワとソロヴィヨフがいま怪我をしていますね。この競技は予測不能で、色んなことが起こるのです。

 (中略)

 ― 国の1番手のカップルを教えるのは難しいものですか?

 私にとっては基本的に意味のないことです。私には二人のポテンシャルが見えていて、尽きてしまうにはまだほど遠く、そこへ近づいているに過ぎません。実際、私は練習ではただ冷血になって二人に“火をつけ”て、厳しくトレーニングしようと努めています。もしも「自分たちは国の1番手で、トレーニングはもっと少なくてもいいし、片足で何かできる」という気持ちを二人から感じれば、すぐにくい止めます。トレーニングでは100パーセントの力を出さなくては。ましてや試合で緊張して締めつけられたら、ふだん落ち着いているときのような演技には見えませんから。

 (中略)

 ― 二人のどんなところを愛しているのかと聞かれたら、何と答えますか?

 二人が私を愛してくれているところですね(笑)。私が愛しているのは、二人が私を信じてくれているところ。二人が私たち――私とパスカーレ――と共通の言葉を見つけられるところです。ケンカや口論はしたことがなくて、共通の意見にたどり着いています。選手とコーチの間でこういうコンタクトを保つのはとても重要なことだと思っています。

 ― オリンピックで二人の順位を受け入れるのは大変でしたか?

 当然です。特にショートプログラムで“キーポイント”を認められなかったときは。今あなたがもしショートプログラムで失敗したら、フリーは特に助けにはならないでしょ。もちろん、私たちはもっと良い順位を期待していましたが、でも彼女たちはカナダの2番手のカップルでした。国の1番手であることと2番手であることは別物なのです。

 ― テッサ・ヴァーチュー/スコット・モイア組が今シーズンの休養を発表した今、扉は大きく開かれましたか?

 目に見えて大きくね。連盟からのサポートもとても大きくなって、あの子たちもより自信を感じています。自分たちが味方されていることが分かるからです。

 (中略)

 ― オーベルストドルフでは採点の実験が行われ、それに沿って2つの審判団が別々のものを採点しました。1つはテクニカルを、もう1つはプログラムコンポーネンツを。このことに、総じて意味があると思われますか?もしくは、あなたが滑っていた頃のアイスダンスは残っていますか?

 新採点システムはとても多くのものを変えたと思っています。運用が始まって最初の4年ぐらいは、エレメンツのレースでした。今は別の側面の仕事が始まっています。振付とつなぎです。これはすでに以前のダンスにより近いものですが、ただ、難しいエレメンツとリフトを伴います。今はフィジカル面で滑るのが非常に難しくなっているのです。すべての技術的なことがさらにエモーショナルにも見えるようトライするのは、とても難しいです。そのためには2倍トレーニングしなくては。

 ― それでも「規定のエレメンツが多すぎて、ダンスをする時間が残らない」と言う専門家もいますね。

 それでも私たちはトライしています。ええ、つなぎを簡単にしている人もいますが、私はその道を取りたくありません。私が思うに、ダンスはダンスであるべきで、エレメンツ間のつなぎは面白いものであるべきです。プログラム全体がひとつのまとまったものに見えて、ダンスの気質が現れるようにね。もちろん、エレメンツ間を小走りに移動するのは簡単ですが、私の生徒たちにとっては難しいですね。

 ― あなたが歩んでいる道は、ジャッジから相応の点数を受け取っていると思いますか?

 ええ、評価されていると思います。

 (中略)

 ― この4年間の五輪サークルは、いくつものカップルの大々的な解散で幕を閉じました。あなたもその昔、ウラジーミル・フョードロフと別れてオレグ・オフシアンニコフとカップルを結成しました。かつてあなたに起こったことと今の状況に何か共通点はありますか?

 そうですね、私たちに何が起こったかというと…私たちは立派にスケートをして、仲良く練習して、とてもいい友だちでした。ねえ、パートナー同士がいちども喧嘩したことのないカップルがあったとすれば、それは私とヴォロージャ(※ウラジーミルの愛称)ですよ。私たちはとても愛し合って、理解し合っていました。毎日のトレーニングはお祭りでした。神経がすり減るようなことはなく、相互理解と連携があったからです。でも、私のコーチであるリニチュクとカルポノソフが、そしてもしかすると私自身が、世界選手権の銅メダリストになったときに私とヴォロージャが最大限に達したこと、自分たちカップルにはこれ以上のポテンシャルはないことを理解したのです。解散ということになったときは、簡単にというわけではなくて…

 ― でも、イリニフとカツァラポフの解散に比べれば、それほど異常に受け止められなかったのでは?

 私たちは、それ以上に、国の3番手に過ぎなかったのです。あの子たちの方は1番手でした。私の考えでは、二人ともあれ以上のパートナーは見つけられません!どちらのカップルにも成功を祈っていますが、彼らはイリニフ/カツァラポフ組が達したところまで行き着く必要があります。もし二人が今シーズン試合に出ていたら、すぐに世界チャンピオンの称号を争っていたのに。その方がずっと簡単だったのに。ただ、若いときは、お互いに個人的な衝突があると、それを自分の中で抑えるのは難しいですよね。

 ― でも、あなたとオフシアンニコフは結局、オリンピックの頂点に到達できませんでしたね。パートナーを変えるという道が正しかったのか、疑念を持ったことはありませんか?

 いいえ、ありません。オレグと組んで1カ月後にアメリカへ渡りました。最初の年はとても大変でした。夏にこちらへ来たのですが、リニチュクはとてもたくさん仕事を抱えていて、新しいカップルとしての私たちにあまり時間を割いてくれませんでした。すり合わせをして、滑り込む必要があったのに。心地よくないことばかりで、さらに祖国を遠く離れていて…その時は真剣に引退してロシアへ帰ることを考えていました。でもその後、私たちはだんだんとお互いを理解し始めて、カップルの関係がしっくりくるようになり、結果が出てきました。だから、疑念はありませんでした。

 ただ、金メダルは1つだけで、ロシアには2つのカップルがあって、そのときはグリシュク/プラトフ組が選ばれたのです。私とオレグのスケーティングレベルはとても良かったし、振り付けは素晴らしかったし、私たちが優勝するべきだったと言う人もたくさんいました。しかし連盟は、グリシュクとプラトフがもう一度オリンピックチャンピオンになって、私たちはもうあと4年残るように決めたようです。でも、私は腰の怪我がひどくて、単純にトレーニングスケジュールに耐えることがもうできませんでした。残念ながら、私は滑り過ぎでは全然なかったの(微笑)。25歳で、パワーの満開、カップルの満開の時期に引退しました。パートナー間の相互理解があって、私たちの滑りを満喫してもらえるときに…

 (中略)

 ― カップルの解散問題に話を戻しましょう。もし別の組み合わせの方がポテンシャルがあると思ったら、あなたは決断して、すでに成立しているカップルを壊すことができますか?

 できると思います。どういう点で将来性があるのか、コーチの方が断然よく見えています。例えば、アメリカのケイトリン・ホワイエク/ジャン=リュック・ベイカー組ですが、女の子は別のジュニアのパートナーと滑っていて、男の子は私たちのリンクからとても遠いところに住んでいました。でも私たちはこの二人を組ませて、去年の世界ジュニアチャンピオンになりました。彼女たちはアメリカの未来だと思っています。

 それで良くなると思ったのなら、選んで実行する必要があると思ったのなら、ただ恐れないことです。もちろん痛みを伴います。もちろん自分の生徒全員を愛していて、みんなが結果を出せるよう手助けしたいと思っています。でも、客観的に見てポテンシャルに限界がある人もいます。そしてこれは、同じ場所で足踏みしていて何かを変える必要があるカップルを乗り気にさせるためにすることなのです。勇敢できっぱりしている必要があります!決断力に欠けるコーチは生き残れません(微笑)。コーチが自信に満ちているのを見てとれば、選手本人もより自信を持ちますからね。もしコーチが疑念を抱けば、生徒の膝もふるえ始めますよ。

 (中略)

 ― コーチは自分の生徒に決して惚れ込むべきではないと、誰かが言っていました。

 それは正しいです。

 ― もっとプロフェッショナルに仕事と向き合う必要があると?

 ええ、でもそれはとても難しくて…生徒たちとはよりオープンな会話をする関係へと進むことがあって、生徒が何か自分の気持ちを打ち明けたり、個人的なことを語ることもありますから。それに、私たちはみんなエモーショナルな人間です。コーチだって毎日生徒を見ていれば、無意識に愛着心が湧くかもしれません。それでもやっぱり、私は選手たちを材料として見ています。ただし、私の魂を彼らに与えるんです。これをどう説明すればいいか分かりません。

 一番おかしいのは、自分の子どもに割く時間はときどき足りなくなるのに、選手のための時間はいつも見つかること(笑)。でも、そうでないとどうにもなりません。選手は、コーチがそばにいると感じなければいけないのです。

 ― お子さんたちは文句を言いませんか?

 文句を言ってますよ(笑)。でも、もう慣れています。


 (以下略)




<原文>
http://rsport.ru/interview/20141002/777094853.html

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この記事へのコメント

  • riesling

    いつも興味深い記事の紹介、ありがとうございます。
    クリロワさんとても厳しいコーチだとうかがってましたが、インタビューの中にもあらわれてますね。
    本気で生徒さんと向き合っているからこそ、試合でいいパフォーマンスをしたときはいつも涙ぐんでしまわれるのですね(^^)
    ホワイエク/ベイカー組、先日のネーベルホルンでとても印象的だったのですがそういったいきさつがあったとは…
    これからますます応援してみたくなりました。
    2014年10月06日 09:06
  • eco

    rieslingさん
    お返事が遅くなってすみません。
    キスクラにクリロワさんがいらっしゃると「おお、今日もお美しい…やさしい笑みを浮かべていらっしゃる…」と毎回嬉しくなるのですが、そうなのですね、厳しいと言われている方なのですね。
    ホワイエク・ベイカー組の演技はきちんと見たことがないので、こんど注目してみたいと思います!
    2014年10月12日 01:43

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