トランコフ<フィギュアスケート界はブランコのよう(2)>

どこまで訳せるかわかりませんが、前回のエントリーを(1)、今回を(2)としました。
ちょっと屈折気味だった(?)トランコフさんに変化の兆しが見える、興味深いインタビューだと思います。



 (中略)


 ― 今あなたはコーチをしていますが、それ一色の生活ですか?

 いま僕はエフゲニア・タラソワ/ウラジーミル・モロゾフ組のコーチをしています。そこに全生活をかけようとしています。自分のプロジェクトにかけた時間も含め、多くの時間が失われてしまいました。そして今、特にアイスショーもなくなったので、「アイス・エイジ」(※ロシア第1チャンネルの人気テレビ番組。元フィギュアスケート選手と有名人がカップルを組み演技を競う)への出演を断りました。二人と一緒に元のレベルに戻る試みをするために。

 ― 2年前のインタビューをよく覚えていますが、あなたはその時こう言いました。「1年やってうまく行かなかったら、そこで終わり。邪魔しないように自分から去る」と。つまり、今は「噛みはじめた」ということですか?

 僕は1年間きちんと仕事をしましたが、二人には助けが必要でした。向こうから頼んできたんです。僕はこのペアのコーチという形ではなく、ポイントごとにサポートしようとしました。もしフルでコーチをしていたら2か月ももたなかったと思います。
 今年は自分たちとの仕事に集中してほしいと頼まれ、僕はあらゆることを天秤にかけて、僕自身にある目標を設定しました。僕は選手としてオリンピックに2度出場したし、ピョンチャン五輪のときは第1チャンネルで仕事をしました。今度はコーチとしてオリンピックで仕事をしたい。リンクサイドに立ちたい。僕にとってそれは今とても重要なことだし、そのためのすべてがそろっています。自分のペアを五輪へ連れて行ったコーチになりたいんです。

 「アイス・エイジ」という大きな問題に突き当たりましたが、僕にはペアがいるので、このプロジェクトを断ることができました。


 (中略)


 ― ペア競技が日陰に行ってしまうのが不安になりませんか?

 競技を引退したばかりの頃は、ガンガン足を踏みならして、目をむいて、ペア競技がサバイバルゲームと化していると叫びました。「この競技は溺死させられようとしている。ペアはもうすぐなくなってしまう」と。でも、その後気づいたんです。「自分は何も変えられず、現状に何も影響を与えられないなら、何のためにこんなことをするんだ?」と。会議室を歩き回ってズボンを擦り切れさせることはできません。

 ― 残念です。というのも、私個人にとってペアとは常にフィギュアスケートそれ自体の神髄だったからです。難度と、美しさと、男と女の「化学反応」と、幾何学的同調性を見られるのはペアだけです。こんなことを言うと女子シングルのファンたちからボロ雑巾が飛んでくるのは分かっていますが…

 正確に言いましょう。「見られる」ではなく「見られた」です。今は単なるスポーツになっています。サイドバイサイドのジャンプをそろえて跳べば「よくやった」となって、誰もそこにラインがあることを見ていません。ベロウソワ/プロトポポフ組、トットミアニーナ/マリニン組、それに多分、ちょっとだけヴォロソジャル/トランコフ組の写真も見てください。彼らのラインを見てください。直角は直角であり、磨き上げられ、1センチ単位まで調整されています。それが今では誰もそんなことを必要としていません。ジャッジはどうでしょうか? 採点しているのはシングルスケーターで、ペアスケーターは事実上いません。もしいたとしても、いつ滑っていたのか僕は知りません。彼らが悪いジャッジだと言っているわけではありませんよ。ペアを自分でやってみたことが事実上ないというだけです。

 ― では、あなた自身はジャッジにならないのですか?

 いいえ! 決してなりません。どうすれば誰かをジャッジできるのか分かりません。いつもジャッジされてきたので、やりたくありません。選手にとってのジャッジにはなりたくありません。

 ― 自分以上に自分の滑りを望んでくれる人たちのためにいつも滑っていたと、いつか話していましたね。

 それはその通りです。ソチオリンピックの1年前に父が亡くなりました。ヨーロッパ選手権の直前でした。父こそが僕の一番のファンでした。オリンピックで優勝した後、どれほど父のリアクションが、眼差しが、言葉が、喜ぶ姿が足りないと感じたか、今でも覚えています。僕がオリンピックで優勝する姿を父が見られますようにと、いつも思っていたんです。父は、もしかすると、あっちから見ていたかもしれませんね。きっと。とてもエゴイスティックに聞こえるかもしれませんが、あのときは本当にそれがとても必要だったんです。

 あのオリンピックのフリープログラムは、名勝負だったとは言えません。ショートプログラム終了時点ですでに全部わかっていましたから。ちなみにあのフリーは僕の最悪の演技でした。ロボットみたいに、ただプログラムを滑り終えるためだけに、機械仕掛けの人形のように滑りました。

 ― 今がっかりしてため息をついているファンがどれほどいるでしょう。

 僕の最高のフリーは、五輪前に行われたグランプリ日本大会での滑りです。あの演技は誇りに思っています。自分のことは分かっています。僕がゾーンに入り、それをつかみ、化学反応をつかんだとき、僕たちは心に入り込みました。僕たちは生きていました。技をを順に追うのではなくね。こういうことはフリープログラムでときどき起こりますが、“いつも”には程遠い。でも、あれは本物の快感でした。

 ― ソチのショートプログラムの歴史的な世界最高得点は、とうとう破られることはなくなりましたね。

 はい。そして、これに迫る得点が出てくるとき、あのコンポーネンツに本当に迫るものなのかを問うことにとても興味があります。将来的に見たいと思うプログラムは、僕たちのようなものや、アリョーナ・サフチェンコ/ブルノ・マッソ組の五輪のフリープログラムのようなものや、現世界チャンピオンである中国ペアの昨年のフリープログラムのようなものです。もしくは、タラソワ/モロゾフ組のラフマニノフ2番のようなもの。僕にとって基準となるペアスケーティングです。

 (つづく…予定)








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この記事へのコメント

  • ちゃおちゃお

    ecoさん
    大変ご無沙汰しております。2012年8月までexciteでIl Cielo Azzuroというブログをやっていたちゃおちゃおです。
    その後、活動の場をFacebookに移しましたが、フィギュアスケートはずっと見ており、ヴォロノフを応援していました。
    が、とうとう先月ヴォロノフも引退を発表。
    途中ちょっと忘れていたこともあったのですが💦2018年のThe Ice@大阪とNHK杯@広島、そして2019年の札幌でのNHK杯と、現役の最終盤を現地で見ることができました。

    ふと思い出してこちらに来たところ、ヴォロノフと仲良しだったトランコフのインタがあり、うれしくなりました。トランコフ夫妻のインスタもフォローしているのですが、バーの話は知らなかったです。

    ヴォロノフがいなくなっちゃって男子はつまらなくなったのですが😢エテリ組vsプルシェンコ組の女子の戦いは目が離せませんね。
    そして今一番気に入っているのは、アイスダンスのズュック&スビーニンのチームの選手たちです。ステパノワ/ブーキンはもちろん、若手のシェフチェンコ/エレメンコ、そしてまだジュニアのシャナエヴァ/ナリズニーです。

    ずっと独学だったロシア語も、2018年の1月からやっと教室に通って習っています。まだまだようやく初級が終わったぐらいのレベルですが、最近はInstagramでズュック&スビーニン門下の選手たちをフォローして、一生懸命コメントを読んだり、辞書を引き引き応援メッセージを書いたりしています。一言返事が来たり(英語だったりすることもあるのだけど😅)、ズュック先生からもいいねが返ってきたりすると、うれしいものですね。
    ヴォロノフの引退後のロングインタビューも見つけているのですが、独特の言い回しの上、超ロングすぎてなかなか読み進めません。
    私がブログをやっていた入門以前のレベルだったときに、無謀にもヴォロノフのインタを訳そうとしたのを思い出し、穴があったら入りたい思いです💦

    これからもときどきお邪魔しますね。
    2020年10月13日 22:52
  • eco

    フランス語のちゃおちゃおさんですね! 本当にお久しぶりです! なんだか大変なことになっていますがお元気でお過ごしでしょうか?

    ヴォロノフさん、ついについに引退してしまいましたね。コロナがなければ続けてくれていたのかなと思うと残念ですが、でも、よくぞここまでやってくれたという気持ちの方が強いでしょうか。2015年の上海ワールドではホテル内でお見掛けして一方的にお声をかけさせてもらったし、2018年の広島NHK杯は私も現地観戦でした!!

    ステブキは私も大好きです。平昌に出られなかったのは本当に不可解だし、得点にもいつも納得がいかないのですが、ずっと応援しています。

    そして、ロシア語をきちんと勉強されているんですね! 尊敬します! 私は10年経ってもちっともレベルが上がらなくて、勉強のしかたが悪いのか、語学の才能がないのか。でもロシア語は“好き”なので、永遠の中級でもいいかなーって感じになっていて。

    ヴォロノフさんのインタビューは難易度高いですね…。ジュニアや若い女子選手のインタの方がずっと読みやすいですが、でも、読みたいものを読みたいですもんね。私もブログ初期の翻訳を見ると恥ずかしくて訳し直したい気持ちになるのですが、でも、「無謀でも何でもとにかくこれを読みたい!」というところからすべてが始まったので。

    以前のように頻繁にUPできないと思いますが、また、たまにのぞきに来てやってくださいませ~♡
    2020年10月17日 18:10
  • YY

    ご無沙汰しています!
    ロシアフィギュア、あいかわらず色々な事件が起こってますね~💧
    個人的な事情で時間がなくなり前ほど海外情報を追えなくなってますがロシア情報だけは入ってきます。 女子選手はトップ入れ替わりが激しく1年先がよめないですし。フィギュアでは技術だけでなく表現者としての成長を見ていきたい自分にはちょっと残念な時代になってきた印象です(苦笑)
    2021年03月05日 21:58