ブイアノワ<ソトニコワとリプニツカヤは友だちになれない(下)>

 ― 演技の直前、あなたはアデリナの気持ちをどんなふうに調整するのでしょうか。彼女に何を話しているのですか?

 彼女の方からいつも私の手を取るんです。どうやら気持ちが楽になるみたい。お決まりのフレーズや呪文のようなものは、私たちの間にはありません。少なくともオリンピックで私が彼女に何を言ったかは、覚えてないわ!

 ― 多くの選手が演技前にある種の儀式を行いますが…

 まず左足の靴ひもを締めて、次に右足を締めるみたいなこと?アデリナにはそういうジンクスはありません。でも、靴は私にしか任せませんね。ウォームアップエリアで準備運動をするときはいつも私のそばに靴を置いて、さらに必ずジャケットを被せています。あとは、そうですね、いつもリンクで十字を切ります。彼女はとても信心深いので…

 わかって頂きたいのですが、ポイントは呪文ではなく、練習熱心さなんです。アデリナと他の選手たちの違いはまさにそこでした。彼女と一緒にあと4人、同年代の女の子が私のグループで練習をスタートしたのですが、チャンピオンの称号にたどり着いたのはアデリナひとりです。

 ― ほかの女の子たちには何が起こったのですか?

 彼女たちは負荷に耐えられず、多くのトレーニングを積むことができず、ふるい落とされました。人生で生き残るのは強い者だけで、スポーツの世界ではなおのことです。アデリナはすべてを乗り越え、耐え抜きました。彼女はいつも男の子たちと一緒に練習していて、彼らよりも強く見えるぐらい!私たちは彼女にいつもお手本になってもらうのですが、男の子たちは決まりが悪くなるんですよ。女の子にできるエレメントが自分たちにはできないので。

 ― まさか10年もの間、アデリナがあなたをがっかりさせたことは一度もなかったと?

 あらゆることがありましたよ…だいたいリンクでの私は恐ろしくて、化け物みたいですから。あるとき、夫が私の様子をのぞきにリンクへやって来て、そこで私が生徒を“しつける”声を耳にして、もう耐えられないと言ったんです。夫はその言葉を守りました。それ以来、リンクで彼の姿を見たことはありません…

 実際、私はとても長い間我慢して耐えているんですが、すっかり参ってしまうと大声で怒鳴りはじめて、怒りで恐ろしい形相になって、もう止まらないんです。マクシム・コフトゥンはこれを何度も経験しています。

 でも、アデリナに声を上げることは滅多にありません。彼女をはじめて怒鳴ったとき、彼女は振付師のところへ行って、「エレーナ・ゲルマノヴナに何があったの?」と聞いたんですよ。私が何を怒鳴っているのかさえ分からなかった。逆に、私に何かあったんじゃないかと心配してくれて!そんなことをされたら、その後どうやって彼女に声を荒げられるというの(笑)。

 アデリナは本物のファイターで、決して弱音を吐きません。とても痛い転び方をしても、誰にも気づかれないんです。その後医者へ行くことになっても、私に言わないんですよ。ずっと後になってから偶然、そんなことがあったと知るんですから。だいたいこの10年間、彼女が泣くようなところを一度も見たことがありません。転倒しても、怪我をしても、何が起こっても…

 ― 実際は、ソチの団体戦に自分が起用されないと知ったとき、泣いたんですよね。アデリナ自身が最近そのことを認めていましたが…

 だって彼女はとても団体戦に出たかったんですよ。なのに、いったん起用されてから、追い出されてしまって!起用しないと告げられたのは、もうソチ行きの飛行機に乗る直前でした。アデレクには辛いことで、このせいでとても神経質な状態でソチ入りしました。団体戦の演技を見て、その後ロシアチームが祝福される様子を見て、どれほど悔しかったか!彼女の顔を見れば分かりました。私とオリガ・ドミトリエヴナ(※ソトニコワの母親)は、ただなだめるしかありませんでした。

 その後、トレーニングでのアデリナを見て、彼女が素晴らしい演技をするだろうということが分かりました。集中して自分の出番に備えていましたから…アデレクが個人戦で「金」を勝ち取ったとき、私はこう思ったぐらいです。「私たちを団体から追い出した人々に感謝します。彼らのおかげでアデレクは五輪チャンピオンになりました」ってね。そう、不公平さが良い意味で彼女を怒らせ、火をつけたんです。そして彼女はできることを全てやってのけました!

 ― 団体戦の枠は、周知のとおり、ユリア・リプニツカヤに与えられました。ところで、我が国のこの2人の五輪チャンピオンの仲はどうですか?

 ふつうに挨拶を交わしていますよ。友だち付き合いはもちろんしていませんが、殴り合いもしていませんよ(笑)。彼女たちが友だちになることはできません。なぜなら、私たちの競技はチーム戦ではなく個人競技で、2人はライバル同士だからです。アデリナの仲間は、家族とコーチと振付師です。

 ― これから先のことを、アデリナともう話し合われましたか?

 この後、世界選手権があります。でも、彼女はいま感情にのみ込まれているので、こういうことがあった後にどう考えをまとめられるのか、私にはわかりません。

 ― 私が言っているのは、もっともっと先の未来のことです。獲れるメダルをすべて獲って、現役を引退して…

 そうなるのはまだまだ先であってほしいわね。そういう遠い未来に関して言うと、今のフィギュアスケーターには、例えば「アイス・エイジ」のようなショーがあるのがとても良いと思います。選手たちはそこで十分に稼げますから。以前はそういう機会がなくて、チャンピオンですら姿を消してしまいました。ある者は大酒飲みになり、ある者はスケートをやめ、ある者はスズメの涙ほどの給料でコーチになって。

 私たちのこの仕事では、五輪チャンピオンの称号ですら考慮されず、研修期間もなく最低限の賃金しか支払われません。でも、それにも関わらずアデリナは、ついでに言うと、将来コーチになりたいと話しています。

 ― あなたのような?

 私より良いコーチになってほしいわ!


 (終)

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