アルトゥニアン<ザギトワのどこがハニュウに及ばないというのか?(2)>

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《女子選手間の緊張状態》

 ― 今回、ショーマ・ウノがやはりステファン・ランビエルとのもとでトレーニングすると決めましたが、その前にあなたに依頼はありませんでしたか。

 理解してほしいのですが、いま私が客観的に見て引き受けられない選手がいるのです。ショーマの場合、たとえ彼が来たいと望んだとしても、私がいま持っているグループには入れなかったでしょう。練習は皆にとって快適なものでなくてはなりません。昨年、イム・ウンスとベルの事件をめぐってどんな大騒ぎになったか思い出してください。ただ、ライバル選手たちの間に常に緊張状態が存在するのは本当のことです。自分の感情を比較的おさえる選手もいれば、逆にぶちまける者もいるというだけ。ロシアの女子選手たちも一緒にトレーニングするのは簡単ではないと思いますよ。

 ― いずれにせよ、すべての公式イベントやその他の場においても、彼女たちは仲良しチームメイトの模範です。

 よくやっています、つまり、努力しているのです! 彼女たちは公の場ではかわいらしくあるべきで、それが私たちの競技の明文化されていないルールです。ボクシングや総合格闘技じゃありませんからね。

 ― とはいえ、五輪シーズンにメドベージェワは、チームメイトでありライバルのアリーナ・ザギトワとのまさにそのわざとらしい親しさに、少なからず精神力を使ったように感じられて…

 ええ、それはいつだって大変なことです。何度も言っていますが、私はユヅルのファンです。彼のしていることが大好きで、2度の五輪を経たのちの進化ぶりが大好きです。今シーズンは4回転ルッツとループを跳びました。2~3年前は基本的に装備していなかったジャンプを! これは未曾有のことで、彼には本当に敬服します! そして今、こういう驚くべきアスリートの姿を見て誰かに、例えばザギトワに引退する潮時だとコメントをするなど、私に言わせれば非論理的です。私はその逆に、彼女には長く競技生活を続けてほしいと願っています。でも、そのためには、自分の仕事への向き合い方を変える必要がありますね。「代表チームに入れないなら、この先どうすればいいの?」などとパニックに陥ってもはじまりません。かっとなって、ピストル自殺でもするのですか? 必要なのは、問題の原因を見つけてその解決に着手すること。もし彼女が本当に現役を続けたいなら、コーチのところへ行って「やりたい!」と言わなければ。まさにモチベーションと意欲の問題です。

 ― しかし、彼女が現役を続けるためには、技術的に難易度を上げなければならないのは明らかで、4回転ジャンプかトリプルアクセルを習得して…

 何が彼女を妨げると? ちょっと遅すぎる? リーザ・トゥクタミシェワは23歳で4回転を跳びましたよ。ここでちょっと、アメリカとロシアにおけるトレーニングの意味合いを比較してみましょう。海の向こうでは、選手にもコーチにも完全な選択の自由があります。誰を生徒に取るか取らないか、私が自分で決定します。どんな連盟も、どんなマネジメント組織も、決定に影響を与えることはできません。これはコーチ個人のビジネスなのです。たとえば、私はいまアメリカのジュニア代表チームの、若くて才能豊かな男子選手をサポートしています。イニシアチブを取ったのは両親で、その子のコーチでもあります。私は喜んでこの仕事をしていますが、その一方で、彼が私のカナダの教え子の潜在的ライバルであることもよくわかっています。彼が依頼してきたとき、私は断ることができませんでした。トレーニングを積みたいという意欲とモチベーションがとにかく振り切れているし、いいライバル関係は結果をもたらすものですからね。私はモチベーションの高い子が好きです。年齢は関係ありません。重要なのは、その子たちがしっかりしたアスリートになるように正しく育てることです。ザギトワについてですが、彼女はこの難しい競技で長きに渡って成功しているユヅルと比べても、何も引けを取りません。才能豊かで、美しくて、彼女を見るのがただただうれしい。だから、選手は自分の運命を自分自身で決めるべきです。ロシアで仕事をしていた頃のことを思い出しますよ。残念ながら私たちコーチも、それに幹部も、自らの権威で選手を押しつぶそうとすることがよくありました。そうではなくて、何でも自分自身で見極める機会を与える必要があると思うのです。

《ザギトワを保存する》

 ― 今シーズンのザギトワのスケジュールは、トレーニングも試合も、以前に比べてそれほど集中的なスケジュールではありませんでした。まるでエテリ・トゥトベリーゼコーチが彼女に少し自由を与えているような…

 エテリ・ゲオルギエヴナがどうしたのですか? 彼女のしていることを見てください! トリノへどれだけの数の選手を連れてきたか! トゥトベリーゼは問題なくフィギュアスケートを理解しているし、アリーナと一緒にすべてをより良く解決する方法をきっと見つけるでしょう。問題は別のところにあります。それは、今回のトリノやそれ以前の大会で、「彼女はいいタイミングで引退しなくてはいけなかったのに!」という意見を一度ならず耳にしたことです。私は今の彼女の方が好きなので、もし引退してしまったらとてもがっかりです。ザギトワとメドベージェワがお互いに競い合い続けてくれればいいのに。こういう筋書きを追うのは面白いですよ! 今回のグランプリファイナル・男子シングルのハニュウとチェンの決闘のようにね。

 ― 実際にはそうはならず、女子シングルには基本的に別の決闘のバージョンがあります。「トゥルソワ対コストルナヤ」の4回転vs.バランスのとれたスケートか、あるいは「トゥルソワ対シェルバコワ」の4回転持ち2人の対決か…

 女の子たちが今なぜこうなっているかわかりますか? なぜなら、4回転ジャンプの技術が安定したからです。身体はどうあるべきか、どのポジションが跳びやすいか、必要なバランスをトゥトベリーゼチームが見つけたのです。そのこととは別に私が願っているのは、この若い女の子たちが良いテクニックを持った大人のスケーターに成長することです。ほら、ハニュウも同じですよ。彼の歩みがどんなふうに始まったか覚えていますか? 今や彼はアイコン。観客のフィギュアスケートへの興味は事実上、彼に支えられている。ユヅルは大ヒット。そして、ロシアの女の子たちのポテンシャルもそれ以下ではありません。

 (つづく)

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